アジアの風だより 第232話 |
ホテルにチェックインしたらするべきこと
日本でも大きく報じられましたが、年も押し詰まった2024年の12月29日、タイの首都バンコクのホテルで火災が発生し、日本人2名を含む外国人5名が亡くなりました。場所はカオサン通りの2本北側を走る通りで、ほぼ繁華街と言っていいでしょう。
高さ6階建てのこじんまりとしたホテルで、室料は中級でしたが全体に高級感がありました。レストランで出されていたパッタイが一皿250バーツ++だったと言えば、どのあたりのクラスに属するホテルかわかってもらえるかもしれません。
新築でもありホテルに必要な設備はすべて整っていましたが、ただひとつ残念なのはスプリンクラーが設置されていなかったことです。タイでは法律によって高さ23メートル以下または総床面積が10,000㎡(100mx100m)以下の建築物には消火装置(スプリンクラー)の設置義務がありません。このホテルはどちらの対象にもならない規模でした。
こう書くと驚かれるかもしれませんが、高さ23メートルは建物にすると7階から8階建て相当で、かなり大きな物件となり、小規模のブティックホテルのほとんどは該当しないでしょう。ただスプリンクラーは設置されていなかったものの非常用の階段は2つあり、消化器なども正しく配置されていたようです。
火元は6階の部屋で、燃えたのもその部屋だけだったそうです。犠牲となった宿泊客は全員がこの6階に宿泊しており、全員が炎ではなく煙が原因で命を落としました。出火当時、6階以下にも宿泊客はいましたが、無事に全員脱出しています。また6階にいても運よく非常階段を見つけられた客は助かりました。
ここから得られる教訓は、ホテルにチェックインしたら非常階段の位置をしっかり確かめておくこと。正直に言ってこれ以外の対策があるかどうかは疑問です。基本中の基本ですが、おろそかにしている人のほうが多いのではないでしょうか。
続いては、ホテルでの火災では火より煙のほうが怖いことです。異変を感じたら、とにかく姿勢を低くしましょう。ドアを開けるときは(開けないほうがいいとも聞きますが)必ず身を低くしておくことも大切です。簡単なことではありますが、大げさな話ではなく、これが生死の分かれ目となります。
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●国名:タイ
ホテルの規模や格式にかかわらず、チェックインしたら避難経路をしっかり確認する習慣を身に付けておきましょう。
タイからはじめるバックパッカー入門 藤井伸二 著